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美術 art

2024年6月23日 (日)

小林東五 井戸茶碗・井戸杯 Ido Tea bowl・Ido Sake cup

P6223393_1_1 Ido Tea bowl ①

小林東五 作 ‘井戸茶碗’

小林東五さんの茶碗は綺麗です。

そもそも、きたない茶碗では誰もお茶を飲みたくありません。

世の中には、古色をつけたものや歪ませた物が茶碗として

重宝されていますが、本来は長い年月を経て備わるものです。

新品から古いなんて本末転倒です。

でも、古色づけは技法としてはありだと考えています。

形も小林東五さんの作品には「用の美」が備わっています。

茶の湯の初期の頃は、茶が飲みやすい物が選ばれて茶器になる

のですから、わざと歪(ゆが)ませる必要など無いのです。

侘び茶の大成の頃から、茶の湯用の専用の茶碗が焼かれるようになります。

その中には不完全なものの中に美を見出す日本の感性が生んだ

歪んだ茶碗も存在します。

P6223396_2_1 Ido Tea bowl ①

小林東五 作 ‘井戸茶碗’

この「井戸茶碗」は対馬にある對州窯の焼き物で、その

源流は朝鮮半島にあります。

名品は無名の陶工が引いた無数の碗の中から見出されます。

主張や個性などは二の次でよいのです。

 小林東五さんが使う「玄」とは仏教で云うところの「無」,

儒教の「虚,白」で道教の用語だそうです。

ただの土から物を作る、無から有を生み出す作陶が道教的

なのだそうです。

P7063450_1_1 Ido Tea Bowl ②

↑小林東五 ‘井戸茶碗’

こちらのお茶碗は少し大振りです。

P7063451_2_1 Ido Tea Bowl ②

小林東五 ‘井戸茶碗’

側面は直線的です。

これも土の表情がわかる程度の釉薬の掛け方です。

小林東五さんの器はどれも実用的で美しいですが、茶道具である

この2つの茶碗とも、お茶が飲みやすいです。

P7063452_1_1 Ido Sake cup

小林東五 作 ‘井戸杯’

筒型の酒杯です。

P7063453_2_1 Ido Sake cup

小林東五 作 ‘井戸杯’

先にわざと歪ませる必要はないと書きましたが、この杯は

意図的に一方に引っ張られています(写真では右側に)。

これは、お酒が飲み易いように工夫されたものです。

2024年6月22日 (土)

方赫山 青瓷越州花文平茶碗 高麗青磁

P6203383_2_1 青瓷 越州花文平茶碗

方赫山 作の「高麗青磁」の平茶碗です。

茶碗の外側と内側に陰刻で蓮の花弁を彫っています。

P6203386_4_1 青瓷 越州花文平茶碗

方赫山さんは韓国の康津(かんじん)郡で発見された高麗青磁の

磁土を用い作陶されています。

高麗青磁の色は翡色と称されています。

土くれから宝石である翡翠を作り出すようなものです。

P6203385_3_1 青瓷 越州花文平茶碗

↑茶碗の内側の陰刻。

牡丹の花か、蓮の花のデザインです。

磁器は茶道具としては固いです。

やはり土で作った茶碗の方が口当たりがよい様に思われます。

2024年5月20日 (月)

安南 染付 魚紋皿

P5193265_1_1 青花 安南魚紋皿

中国製のベストセラー。

清朝時代に安南(ベトナム)に輸出された染付

(コバルト顔料で絵付け)の白磁皿です。

皿の直径は約14㎝。

図案は鮎魚(でんぎょ・ナマズ)です。

中国語では「魚」は「餘(余)」とおなじ読みで、

「年年有餘(毎年余裕のある暮らしができる)」という

意味の‘おめでたい’文様です。

この皿の魅力は何といっても魚を描く勢いのある筆遣いです。

大量生産品ですので短時間に絵付けを済ませるために、

熟練の職人が一気呵成に描いています。

P5193266_2_1 青花 安南魚紋皿 の裏側

大量に生産された皿ですが、高台の中も釉薬が

施されていて丁寧に作られています。

皿の裏にも染付で文様があしらっています。

あまり飾り気のない洒落た図柄が日本人の美意識にも

響き、多く残されています。

皿の表面に文字や記号が削ってあるものが存在しますが、

意味は未だ不明のようです。

2023年9月 1日 (金)

ルネ・ラリック 「トーキョー」グラス,Rene Lalique 「Tokyo」

Rene Lalique(ルネ・ラリック)はアール・ヌーヴォからアール・デコ

の時代に活躍した、宝飾作家でありガラス工芸作家です。

P8252638_1_1  Rene Lalique ‘Tokyo’ model glass table ware

ルネ・ラリック 「トーキョー」グラス。

高さは約11.3㎝、水用のグラスです。

約100年前の物とは思えないシンプルで洗練されたデザインです。

P8252639_2_1 Rene Lalique `Tokyo' model glass plate design

グラスのプレート部分のデザインは真珠をモチーフとしています。

光りにとてもよく輝きます。

P8252646_6_1  Rene Lalique ‘Tokyo’ model glass table ware

水を入れた状態。

プレート部分の粒々は底面に施されていて、上面はつるつると

しています。

材質はセミクリスタル(クリスタルガラスよりも鉛の含有率が低く、

加工が容易でソーダガラスの丈夫さも併せ持ちます)。

クリスタルガラスのように鉛を含むので透明度ときらめきがあります。

鉛は通常の使用(ワインの酸など)では問題はありません。

P8252645_5_1  Rene Lalique ‘Tokyo’ model glass table ware

この粒々文様、上から見るとどう見えるのでしょうか。

グラスはルネ・ラリックの作品の中でも比較的に手が届きやすい

芸術品です。

P8252641_3_1  Rene Lalique ‘Tokyo’ model glass table ware

↑これは、水が入っていない状態。

水を入れると・・・

P8252643_4_1  Rene Lalique ‘Tokyo’ model glass table ware

↑水を入れると、この様に見えます。

少し虹のような部分も見えます。

計算してデザインされたのか、とても美しいです。

2023年5月13日 (土)

莨盆(煙草盆) 古伊万里・萩唐草

P5052327_1_1

2本の煙管(きせる)と煙草包がありませんが、煙草盆です。

莨(たばこ)盆は、茶道具にはもう必要はありません。

莨を喫う(すう),喫する(きっする)のが粋な時代も

あったのですが現代には合いません(煙管では2~3服軽く

吸うだけのようです)。

お茶の味も台無しになりますし、なにより侘茶を大成した

千利休の時代にはまだ‘たばこ’は渡来していませんでした。

P5052330_3_1

古伊万里の「火入」です。

「火入」とは中に灰を敷き詰め炭火を入れておく器の事です。

灰の盛り方や模様の付け方、炭の大きさや煙管に火を着けやすいように

炭を設置する角度など細かな約束事があります。

簡単に言うとライターです。

P5052329_2_1

こちらは古伊万里の「灰落し」または「灰吹き」です。

`たばこ´を喫った後の灰を捨てる容器(灰皿)です。

底に少し水を入れておきます。

煙管の皿の上の灰を捨てるときは煙管の先をコンコンと「灰吹き」

に当てたりはしません。

当てると瀬戸物の「灰落し」と金属の煙管が傷みます。

「灰落し」が竹製の場合はコンコンとしても良いかも知れませんが、

普通は指で煙管をトントンとするか煙管を軽く吹いて灰を落とします。

「火入」「灰吹き」ともに染付(コバルト顔料)で萩唐草の

文様が丁寧に描かれています。

後代になると唐草の文様は簡略化されていきます。

2022年9月21日 (水)

寺西宗山 象嵌火箸 と 象嵌釜釻

P9211893_2_1 Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal

無形文化財 寺西宗山(てらにし そうざん)

「菊桐金銀流込象嵌角透火箸」

鉄地に溝を掘り、高温で溶かした金属を流し込んで嵌め込む

難しい技法が使われています。

寺西宗山さんの火箸は技術の高さもありながら、姿が美しいのが

魅力です。

P9211894_3_1 Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal

金と銀で象嵌が施されています。

寺西宗山さんは名古屋の金工で、「流込み象嵌および鑞付け透入り

鉄袋打」の高い技術で無形文化財に指定されました。

P9211896_4_1 Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal

流し込み象嵌文様のアップ。

溶けた金属は表面張力で丸くなり、細い溝に流し込むのは

大変難しい技術だと思います。

P9211900_5_1 Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal

火箸の持ち手部分を側面から見た様子。

「亀甲(きっこう)透かし」になっています。

この`透かし´は熱伝導の良い金属で炭を持つ場合、空冷方式で

持ち手部分を冷やす役目をしています。

実際に透かしがある部分と無い部分とでは温度がかなり違います。

この透かしを接着する時にも「鑞付け」の技術が必要です。

P9211902_7_1 Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal

寺西宗山「七宝流込象嵌亀甲透角火箸」

七宝文様を象嵌技法で表現しています。

火箸は寺西宗山さんの作品が一番綺麗です。

右に出る人はいません。

P9211903_8_1 Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal

七宝文様(無限に続く輪っか。吉祥文様の一つ)。

P9211905_10_1 Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal

光りにかざすと象嵌部分が光り輝きます。

暗い茶室の中では、とても綺麗だと思います。

この火箸も持ち手部分に「透かし」が施されており、

熱くならないようになっています。

P9211906_11_1 Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal

寺西宗山「菊桐象嵌火箸」

この火箸は上の2つと違い、断面が丸く中空の「袋打」に

なっています。

「袋打」とは金属の板を鍛造して丸め、中を空洞にする技術です。

これも炭から伝わる熱を逃がし持ち手が熱くならないように

する工夫です(鉄瓶にも袋鉉があります)。

P9211911_12_1 Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal

象嵌部分。

菊と桐の文様です。

P7033439_5_1 Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal

寺西宗山 作 金銀象嵌角透火箸 銘「四君子」

金と銀を象嵌に使った飾り火箸で‘流し込み象嵌’と‘透かし’‘鑞付け’

の技法が使われています。

側面は透かし状になっていて、持ち手が熱くならないような造りに

なっています。

1本に2面、2本で4面に四君子(気品の高い植物、すなわち梅・竹・蘭・菊)

の意匠が象嵌されています。

P7033440_6_1 Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal

「四君子」象嵌火箸

上‘菊’,下‘竹’の象嵌。

P7033438_4_1 Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal

「四君子」象嵌火箸

上‘蘭’,下‘梅’の象嵌。

4組共に高い技術と芸術性を兼ね備えた火箸です。

P7033441_7_1  Inlaid metal pot rings for lift Chagama

寺西宗山 作 金流込象嵌釜釻(かまかん) 銘「うず潮」

この釜釻には‘流し込み象嵌’と‘袋打ち’の技法が使われています。

金属を象嵌した板を打って筒状にして、中空の構造にしています。

釜釻の中が空洞なので熱が伝わりにくく、実用性と軽さを

実現しています。

P6233399_2_1 Inlaid metal pot rings for lift Chagama

寺西宗山 作 釜釻「うず潮」

釜釻の丸い形状に波模様を描くことで‘渦潮’を表現しています。

鳴門海峡の渦潮(Whirlpool of Naruto)は有名です。

寺西宗山さんは、センスの塊です。

P7033442_8_1 Inlaid metal pot rings for lift Chagama

金流し込み象嵌で表現された、渦潮の‘波’。

P7033443_9_1 Inlaid metal pot rings for lift Chagama

金流し込み象嵌で表現された、渦潮のうねりと波頭。

P7033433_1_1 Inlaid metal pot rings for lift Chagama

寺西宗山 作 南鐐流込象嵌釜釻 銘「うず潮」

この釜釻は象嵌の素材に南鐐(純度の高い銀)を使った作品です。

‘流し込み象嵌’と‘袋打ち’の技法が使われています。

P7033434_2_1 Inlaid metal pot rings for lift Chagama

南鐐流込象嵌釜釻「うず潮」

銀の反射率は可視光線で90%と高く、金属の中では一番

輝きがあります。

P7033435_3_1 Inlaid metal pot rings for lift Chagama

南鐐流込象嵌釜釻「うず潮」

銀で表現された波と飛沫(しぶき)。

南鐐(銀)の方が夏に涼やかな感じがあります。

 

 

2022年9月19日 (月)

古谷忠六さんの「ぐい吞み」と「大壷」 (信楽焼)

P9191882_3_1  Sake Cup Shigaraki

古谷弘(忠六)さんの信楽焼の「ぐい吞み」です。

直径は9㎝。

信楽焼を焼く燃料の「赤松」の薪の灰が陶土と化学反応を

おこして自然釉となります。

この盃は人為的に釉薬を掛けたものではありません。

P9191884_4_1 Sake Cup Shigaraki

盃の裏側。

この「ぐい吞み」は、これ1つで信楽焼の全ての表情を

見ることが出来ます。

窯の高温の炎と薪の灰がもたらす表現です。

信楽焼の代表的な色である緋色(スカーレット色)も見られます。

P9191888_6_1 Sake Cup Shigaraki

古谷忠六さんは壷作りの名人でしたが(特に大壺が見事)、

この様な小品にも名作が多くあります。

たっぷりと自然釉が掛かっています。

信楽焼の「伝統工芸士」なので窯焼きの技術の素晴らしさも

感じられます。

P9191891_7_1 Sake Cup Shigaraki

盃の底のエメラルドグリーンのビードロが美しいです。

この色は赤松の灰でないと現れません。

静かな雰囲気の良いぐい吞みだと思います。

P9191885_5_1 Sake Cup Shigaraki

忠六さんの釜印。

「忠六」さんの信楽焼を見るまでは「信楽焼」が嫌いでした。

貧乏くさく、狸ばっかり作っているイメージで、焼き物では

やはり中国や朝鮮半島には敵わないと思っていました。

初めて「忠六」さんの信楽焼を見て、その綺麗さに驚き

「信楽焼の自然釉」こそ日本が世界に見せられる焼き物だと

考えるようになりました。

P7073455_1_1 Shigaraki Large PotTsubo

古谷弘(忠六) 信楽焼 大壷。

古谷忠六さんは壷造りの名人です。

この壷は珍しく明るい色調です。

壷の口は二重口縁になっています。

茶壷用でしょうか

P7073456_2_1 Shigaraki Large PotTsubo

壷の肩から胴にかけて自然釉が流れています。

P7073458_4_1 Shigaraki Large PotTsubo

焼成するときに被った灰が土の成分と反応し釉薬となっています。

この表情が信楽焼の醍醐味で、古信楽焼の自然釉は高名な陶芸家の

神山清子さんが現代に復活させました。

P7073459_5_1 Shigaraki Large PotTsubo

窯の中で灰に埋もれた部分は黒く発色しています。

信楽焼に使われる土は古琵琶湖の土で、とてもきめが細かいの

ですが、荒い長石が混じっています。

 

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