蛸唐草の火入れと灰落し Takokarakusa Imari smoking tools
古伊万里の蛸唐草の火入れと灰落しの煙草道具(莨盆)です。
裾文様(すそもんよう)は蓮弁文(蓮の花の花弁)です。
図案が蛸唐草に簡略化される前は、上の写真のような花と葉が
存在する文様でした。
元をたどると、ヘレニズム文化の影響でギリシャなど西方から
伝わった図柄です。
二重線の蛸唐草 Tako Karakusa pattern
江戸時代中期頃の蛸唐草には線で輪郭線を描いた後に、中を
濃み(だみ,コバルト顔料)で彩色したものがあります。
蛸唐草がコバルトの線に囲まれているので、二重線の蛸唐草と
呼ばれ、高級な器に用いられています。
江戸時代も後期になると、蛸唐草は一筆書きで描かれるようになります。
間の抜けたような図柄が多くなる中、上の写真の様に腕のある職人に
よる絵付けでは二重線の蛸唐草にも引けを取りません。
口縁文様ですが、高級な器では折り返し部分の口縁文様が↑の写真
の様に「卍襷文様(まんじたすきもんよう)」になっています。
一般的には折り返しの口縁文様は「四方襷文様(しほうたすきもんよう)」
であることが多いです。
鍛造の五徳、北陸地方では金輪(かなわ)。
鉄製で鉄輪(かなわ)とも表記します。
上の五徳の輪の直径は24㎝,高さは28㎝。
囲炉裏(fireplace)では燃料に薪も使うので高さがあります。
現在は鋳造品が多いですが、これは熱した鉄を叩いて曲げて
作っています。
鍛造して足の部材を曲げて、上の輪を固定すると同時に
爪を成形しています。
↑曲げて固定している部分。
↑こちらは、もう一回り大きな五徳(金輪)。
上の輪の直径は34㎝,高さが31㎝。
金輪(かなわ)は、自在鉤では吊るせないような重さや
大きさの鍋などを置くのに使われます。
爪もあるので輪より小さな鉄瓶などもかけられます。
足は鍛造しているので輪を固定する部分の幅が厚くなり
綺麗なフォルムをしています。
足の上部に「上」と彫ってあります。
置く位置を示しているのか、使用目的を意味しているのか
わかりません。
輪の部分の鉄の厚みは1㎝以上あります。
大きさは各、高さ5㎝ 口直径5.5㎝ぐらいです。
青・緑・赤・ピンクの4色をコレクションしています。
↑上から見た様子。
底にあしらってある花文様が可愛らしく、黒木国昭さんの小品の
作品の中でも白眉です(工房作かもしれません)。
この‘ぐい呑み’彩色も美しいのですが、実は・・・
色が着いているのは、底の花だけなんです。
他の部分は無色透明なガラスです。
ガラスへの映り込みで口縁などに色が着いているように
見えるのです。
ガラスの特性を熟知している黒木国昭さんならではの作品です。
底に配してある花は3D(立体)です。
冷酒にぴったりです。
小林東五 ‘井戸茶碗’
小林東五さんの茶碗は綺麗です。
そもそも、きたない茶碗では誰もお茶を飲みたくありません。
世の中には、古色をつけたものや歪ませた物が茶碗として
重宝されていますが、本来は長い年月を経て備わるものです。
新品から古いなんて本末転倒です。
でも、古色づけは技法としてはありだと考えています。
形も小林東五さんの作品には「用の美」が備わっています。
茶の湯の初期の頃は、茶が飲みやすい物が選ばれて茶器になる
のですから、わざと歪(ゆが)ませる必要など無いのです。
侘び茶の大成の頃から、茶の湯用の専用の茶碗が焼かれるようになります。
その中には不完全なものの中に美を見出す日本の感性が生んだ
歪んだ茶碗も存在します。
小林東五 ‘井戸茶碗’
この「井戸茶碗」は対馬にある對州窯の焼き物で、その
源流は朝鮮半島にあります。
名品は無名の陶工が引いた無数の碗の中から見出されます。
主張や個性などは二の次でよいのです。
小林東五さんが使う「玄」とは仏教で云うところの「無」,
儒教の「虚,白」で道教の用語だそうです。
ただの土から物を作る、無から有を生み出す作陶が道教的
なのだそうです。
↑小林東五 ‘井戸茶碗’
こちらのお茶碗は少し大振りです。
小林東五 ‘井戸茶碗’
側面は直線的です。
これも土の表情がわかる程度の釉薬の掛け方です。
小林東五さんの器はどれも実用的で美しいですが、茶道具である
この2つの茶碗とも、お茶が飲みやすいです。
小林東五 ‘井戸杯’
筒型の酒杯です。
小林東五 ‘井戸杯’
先にわざと歪ませる必要はないと書きましたが、この杯は
意図的に一方に引っ張られています(写真では右側に)。
これは、お酒が飲み易いように工夫されたものです。
中国製のベストセラー。
清朝時代に安南(ベトナム)に輸出された染付
(コバルト顔料で絵付け)の白磁皿です。
皿の直径は約14㎝。
図案は鮎魚(でんぎょ・ナマズ)です。
中国語では「魚」は「餘(余)」とおなじ読みで、
「年年有餘(毎年余裕のある暮らしができる)」という
意味の‘おめでたい’文様です。
この皿の魅力は何といっても魚を描く勢いのある筆遣いです。
大量生産品ですので短時間に絵付けを済ませるために、
熟練の職人が一気呵成に描いています。
大量に生産された皿ですが、高台の中も釉薬が
施されていて丁寧に作られています。
皿の裏にも染付で文様があしらっています。
あまり飾り気のない洒落た図柄が日本人の美意識にも
響き、多く残されています。
皿の表面に文字や記号が削ってあるものが存在しますが、
意味は未だ不明のようです。
Rene Lalique(ルネ・ラリック)はアール・ヌーヴォからアール・デコ
の時代に活躍した、宝飾作家でありガラス工芸作家です。
Rene Lalique ‘Tokyo’ model glass table ware
ルネ・ラリック 「トーキョー」グラス。
高さは約11.3㎝、水用のグラスです。
約100年前の物とは思えないシンプルで洗練されたデザインです。
Rene Lalique `Tokyo' model glass plate design
グラスのプレート部分のデザインは真珠をモチーフとしています。
光りにとてもよく輝きます。
Rene Lalique ‘Tokyo’ model glass table ware
水を入れた状態。
プレート部分の粒々は底面に施されていて、上面はつるつると
しています。
材質はセミクリスタル(クリスタルガラスよりも鉛の含有率が低く、
加工が容易でソーダガラスの丈夫さも併せ持ちます)。
クリスタルガラスのように鉛を含むので透明度ときらめきがあります。
鉛は通常の使用(ワインの酸など)では問題はありません。
Rene Lalique ‘Tokyo’ model glass table ware
この粒々文様、上から見るとどう見えるのでしょうか。
グラスはルネ・ラリックの作品の中でも比較的に手が届きやすい
芸術品です。
Rene Lalique ‘Tokyo’ model glass table ware
↑これは、水が入っていない状態。
水を入れると・・・
Rene Lalique ‘Tokyo’ model glass table ware
↑水を入れると、この様に見えます。
少し虹のような部分も見えます。
計算してデザインされたのか、とても美しいです。
2本の煙管(きせる)と煙草包がありませんが、煙草盆です。
莨(たばこ)盆は、茶道具にはもう必要はありません。
莨を喫う(すう),喫する(きっする)のが粋な時代も
あったのですが現代には合いません(煙管では2~3服軽く
吸うだけのようです)。
お茶の味も台無しになりますし、なにより侘茶を大成した
千利休の時代にはまだ‘たばこ’は渡来していませんでした。
古伊万里の「火入」です。
「火入」とは中に灰を敷き詰め炭火を入れておく器の事です。
灰の盛り方や模様の付け方、炭の大きさや煙管に火を着けやすいように
炭を設置する角度など細かな約束事があります。
簡単に言うとライターです。
こちらは古伊万里の「灰落し」または「灰吹き」です。
`たばこ´を喫った後の灰を捨てる容器(灰皿)です。
底に少し水を入れておきます。
煙管の皿の上の灰を捨てるときは煙管の先をコンコンと「灰吹き」
に当てたりはしません。
当てると瀬戸物の「灰落し」と金属の煙管が傷みます。
「灰落し」が竹製の場合はコンコンとしても良いかも知れませんが、
普通は指で煙管をトントンとするか煙管を軽く吹いて灰を落とします。
「火入」「灰吹き」ともに染付(コバルト顔料)で萩唐草の
文様が丁寧に描かれています。
後代になると唐草の文様は簡略化されていきます。
Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal
無形文化財 寺西宗山(てらにし そうざん)
「菊桐金銀流込象嵌角透火箸」
鉄地に溝を掘り、高温で溶かした金属を流し込んで嵌め込む
難しい技法が使われています。
寺西宗山さんの火箸は技術の高さもありながら、姿が美しいのが
魅力です。
Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal
金と銀で象嵌が施されています。
寺西宗山さんは名古屋の金工で、「流込み象嵌および鑞付け透入り
鉄袋打」の高い技術で無形文化財に指定されました。
Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal
流し込み象嵌文様のアップ。
溶けた金属は表面張力で丸くなり、細い溝に流し込むのは
大変難しい技術だと思います。
Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal
火箸の持ち手部分を側面から見た様子。
「亀甲(きっこう)透かし」になっています。
この`透かし´は熱伝導の良い金属で炭を持つ場合、空冷方式で
持ち手部分を冷やす役目をしています。
実際に透かしがある部分と無い部分とでは温度がかなり違います。
この透かしを接着する時にも「鑞付け」の技術が必要です。
Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal
寺西宗山「七宝流込象嵌亀甲透角火箸」
七宝文様を象嵌技法で表現しています。
火箸は寺西宗山さんの作品が一番綺麗です。
右に出る人はいません。
Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal
七宝文様(無限に続く輪っか。吉祥文様の一つ)。
Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal
光りにかざすと象嵌部分が光り輝きます。
暗い茶室の中では、とても綺麗だと思います。
この火箸も持ち手部分に「透かし」が施されており、
熱くならないようになっています。
Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal
寺西宗山「菊桐象嵌火箸」
この火箸は上の2つと違い、断面が丸く中空の「袋打」に
なっています。
「袋打」とは金属の板を鍛造して丸め、中を空洞にする技術です。
これも炭から伝わる熱を逃がし持ち手が熱くならないように
する工夫です(鉄瓶にも袋鉉があります)。
Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal
象嵌部分。
菊と桐の文様です。
Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal
寺西宗山 作 金銀象嵌角透火箸 銘「四君子」
金と銀を象嵌に使った飾り火箸で‘流し込み象嵌’と‘透かし’‘鑞付け’
の技法が使われています。
側面は透かし状になっていて、持ち手が熱くならないような造りに
なっています。
1本に2面、2本で4面に四君子(気品の高い植物、すなわち梅・竹・蘭・菊)
の意匠が象嵌されています。
Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal
「四君子」象嵌火箸
上‘菊’,下‘竹’の象嵌。
Inlaid metal chopsticks for handling live charcoal
「四君子」象嵌火箸
上‘蘭’,下‘梅’の象嵌。
4組共に高い技術と芸術性を兼ね備えた火箸です。
Inlaid metal pot rings for lift Chagama
寺西宗山 作 金流込象嵌釜釻(かまかん) 銘「うず潮」
この釜釻には‘流し込み象嵌’と‘袋打ち’の技法が使われています。
金属を象嵌した板を打って筒状にして、中空の構造にしています。
釜釻の中が空洞なので熱が伝わりにくく、実用性と軽さを
実現しています。
Inlaid metal pot rings for lift Chagama
寺西宗山 作 釜釻「うず潮」
釜釻の丸い形状に波模様を描くことで‘渦潮’を表現しています。
鳴門海峡の渦潮(Whirlpool of Naruto)は有名です。
寺西宗山さんは、センスの塊です。
Inlaid metal pot rings for lift Chagama
金流し込み象嵌で表現された、渦潮の‘波’。
Inlaid metal pot rings for lift Chagama
金流し込み象嵌で表現された、渦潮のうねりと波頭。
Inlaid metal pot rings for lift Chagama
寺西宗山 作 南鐐流込象嵌釜釻 銘「うず潮」
この釜釻は象嵌の素材に南鐐(純度の高い銀)を使った作品です。
‘流し込み象嵌’と‘袋打ち’の技法が使われています。
Inlaid metal pot rings for lift Chagama
南鐐流込象嵌釜釻「うず潮」
銀の反射率は可視光線で90%と高く、金属の中では一番
輝きがあります。
Inlaid metal pot rings for lift Chagama
南鐐流込象嵌釜釻「うず潮」
銀で表現された波と飛沫(しぶき)。
南鐐(銀)の方が夏に涼やかな感じがあります。
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